平成5年度に土地区画整理事業に着手し、大規模物流拠点を実現するため、集約換地が大きな課題となり、仮換地設計と並行して地元組織作りが進められた。
申し出換地と土地利用を組み合わせ、平成10年に物流拠点形成の受け皿となる「浅山土地管理株式会社」を設立した。
地権者意向を踏まえ、「個別利用」、「賃貸」、「売却」の3つに区分して申し出換地を行う一方、これと連動して「自己利用」、「農地利用」、「宅地利用」に、土地売買又は土地賃貸の「物流系利用」による5つの土地利用計画を定めた。
共同賃貸と売買部分は、短冊形換地(スリット型換地)によって、一段の土地協働活用を可能としている(実際には共有処分に近い)。
土地所有の継続意向を持つ農家地権者と、借地による大規模土地確保を望む企業とを仲立ちするディベロッパー的役割を果たす組織として、概ねの面積比率に沿って各地権者が出資する共同出資会社である「浅山土地管理株式会社」を、平成10年に設立した。
浅山土地管理株式会社は、地権者から概ね40年の普通借地によって土地を借り受け、賃借料を支払い、土地利用計画と企業立地意向に基づき、適切な区画に区分して企業に普通借地契約で賃貸して賃貸料を受け取る。
地権者に払う平均的な地代は750円/月坪、企業から受け取る賃貸料は860円/月坪で、会社の経費はその差額の約900万円/年である。
初期投資を少なくしたい企業は、浅山土地管理株式会社が必要な敷地規模を一括して借地として提供することで、立地にかかるコスト低減とスピードアップなど、大きなメリットを享受でき、平成17年4月時点で、浅山土地管理会社が地権者から借地している面積12.5haの全区画が企業と賃貸契約済みとなっている。
東海市は、「東海市浅山新田企業立地交付金条例」を制定し、立地企業に3年間固定資産税の一定割合の交付金を支援するとともに、市のHPにおける企業誘致案内などを行っている。
 
●浅山土地管理株式会社社長 木下信男氏
 この浅山新田地区は旧来からの水田として土地利用をしてきましたが工業専用地区としての指定から周辺の工業化が進み、しかも農業の後継者不足から農業経営が困難な状況となっていました。
 たまたま地区内を第二東名道路が貫通することとなり、地域の整備は必須となり区画整理による整備に踏み切りました。
しかし、個人の土地面積は弱小のため共同化による集約換地しか企業立地の方法はなく、地主による土地管理会社を設立して企業への土地賃貸という道を選択し、現在ではその目的を達し、企業からの収入を得て順調に推移しています。
 農業経営から賃貸経営へ切り変えたことが効果的であったと喜んでおります。
●東海市 都市建設部区画整理課 統括主幹 安藤 悟氏
 土地市場を取り巻く環境が日々大きな変化を見せるだけでなく、複雑多岐に渡った課題が土地区画整理事業に投げかけられています。東海浅山新田土地区画整理事業では、施行地区内の大半が農地であり、工業専用地域という用途地域上の制限内での土地利用増進(物流拠点整備)を地権者の意向と調和をもって達成させること、区画整理組合の経営上の対応を図ることが大きな課題であった。
 これらの課題に対し、市、コンサルタント、地権者の協力のもと、土地区画整理事業との歩調を合わせつつ、土地管理株式会社の設立やその運営を進めるなど、進出企業の獲得、賃貸による土地活用等様々な取り組みを展開してまいりました。
●玉野総合コンサルタント 区画整理部事業推進課 加藤 哲氏
 私が携わった東海浅山新田土地区画整理事業は、全国でも数少ない工業専用地域の地区でした。将来の土地活用を十分考慮した工業系市街地整備を達成するため、組合設立以前から市の協力を得ながら地権者への説明会並びに意向調査を実施しました。この調査結果をもとに換地設計においては大半を飛換地し、個々の利用目的別(共同賃貸、共同売却、個別利用、農地、既存住宅地)に集約化を図ることができました。この手法は地権者の理解と意思統一が図れたからできたことだと思います。
 この事業はまもなく解散を迎えますが、すでに70社以上の企業が進出し土地の有効活用がされており、このような現状を見ますとこの事業に関わることができてうれしく思います。
▲立地が進む浅山地区
▲伊勢湾岸道路と結ぶ都市計画道路
▲企業立地が行われ操業している街区
▲企業立地が行われ操業している街区
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